お客様と「洗練されたモノやコト」をつなぐ特別な場所、THE GINZA SELECT。私達がお届けするものは形ある商品や直接体験していただくサービスだけではありません。様々な舞台で活躍される方々の、まさに私達のコンセプトと同じように「洗練されたサービスや技術」を発信し続ける方々の、輝き溢れる言葉や想いの一つ一つが、私達がお客様にお届けしたい「洗練されたモノやコト」と言えます。このコーナーでは、卓越した技術と知識で活躍される、そのようなスペシャリストの皆様にご登場いただき、GINZAに相応しい「想い」、世界に1つだけの「唯一無二の物語」を語っていただきます。

1st Guest  大瀬 隆信

現在銀座の会員制クラブCITY CLUB OF TOKYO(東京都中央区銀座3丁目3−1 ZOE銀座 7階)の支配人を務める大瀬 隆信氏。ホテルニューオータニでのサービススタッフとしてキャリアをスタート、以後様々なホテルやレストランのサービスワークやプロデュースに従事。接客のエキスパートである大瀬氏を今回のゲストに迎えうかがったお話を3回に分けてお送りいたします。

CITY CLUB OF TOKYO 支配人

大瀬 隆信

TAKANOBU OHSE

株式会社ホテルニューオータニに25年勤務。その後、フランス ニースに本店を構えるKEISUKE MATSUSHIMA TOKYO General Manager兼Brand Managerとして勤務。国内外ハイブランドやフランス企業との数々のイベントやケータリングの企画運営を担う。

その他、専門学校や各種セミナーでの講師を務める(企業向けレストラン・ビジネスマナー講座、学生向け西洋料理テーブルマナー講座、2019年・2020年 Miss Sakeナデシコプログラムにおけるテーブルマナー基礎講座、国際乾杯儀礼講座等)。

並行してリゾートホテル、レストランの起ち上げ・プロデュースに従事する。現職は、会員制倶楽部CITY CLUB OF TOKYO支配人。

スペシャル・ポートレート Vol.1

ビジネスにおけるエピソード

~ホテルニューオータニで手に入れたもの~

編集部
長きにわたってホテル、レストラン業界でお仕事をされていますが、そのキャリアのスタートについてお聞かせください。
大瀬
ホテルや観光サービスにまつわる学問を学生時代に学んでいたのですが、並行してホテルニューオータニでアルバイトをしていました。バーのスタッフとして夕方から深夜まで。卒業後就職先としてニューオータニを選択しました。元々子供の頃、ニューオータニで見たモンキージャケットと呼ばれるウェイターの制服に憧れて、いつか自分も着てみたいと思ったのがきっかけですが。
編集部
アルバイト経験があるとは言え新入社員としてのお仕事はご苦労があったと思いますが、いかがでしたか。
大瀬
営業時間が長いため新人の通り道と言われているコーヒーショップにまず配属されました。この時期朝食ビュッフェの準備も担当したのですが、料理を切らさないよう補充したり、塩をかけて固めた氷でフルーツを冷やしたり、毎日1000人の宿泊客が利用するコーナーで経験を積みました。
こういったルーティン業務をこなす一方、お客様から直接オーダーをとれるようになるため、提供している料理のレシピを頭に叩き込もうと考えました。仮にお客様から嫌いなものやアレルギーについての要望があっても料理の内容を理解していなければ説明ができない。その場で答えられるようにするためには、スパゲッティミートソースの作り方であったり、コーンスープのコーンの種類が何かということを知っておく必要があります。そのために帰宅後、実際に作ってみました。
編集部
サービス全般を理解するために本来の役割とは異なる知識にも目を向けられていたのですね。
大瀬
お客様に対して自信を持って話せるようなりたかったのが理由です。入社4年目で中国料理のレストランに配属されたのですが、初めに戸惑ったのが漢字だけの料理名。料理名には材料や調理法等の意味が込められているのですが、その文字数はレストランによって異なります。料理の内容やシェフが話す調理法を理解しなければお客様ともシェフとも会話が出来ない。そう考えてこの時は本格的な調理道具を揃えて自宅で試しました。その甲斐あって下ごしらえや味付けの意図が分かるようになりました。
編集部
本格的な道具を揃えるのは思い切った行動だと思いますが、作り方を知ることで料理と料理名がつながったということですね。
大瀬
お客様に対する自信にもつながりました。中国レストランで経験を積んだその後はコンチネンタル料理を通じてフルサービスを学びました。その後イタリアンを経てトゥールダルジャン(1582年パリのセーヌ川のほとりにオープンした世界最古のフレンチレストラン)の東京店に配属されました。
編集部
トゥールダルジャンと言えば最高級フレンチとして知られる名店ですが、それだけにプレッシャーも大きかったと思います。そもそもスタッフの皆様はある程度の経験を積むと配属されるものなのですか。
大瀬
ゼネラルマネージャーのクリスチャン・ボラー氏が直接対面してスカウトした人物以外は採用しないと言われています。私が当時勤務していたイタリアンレストランにボラー氏が来店したのですが、その際当時の日本のレストランでは見られなかったフレッシュなハーブティーを提供しました。実は屋上でこっそりとミントやレモングラス等のハーブを育てていて、何か変わったことで驚かせつつも喜んでもらいたい一心でそれを提供しました。そのことがきっかけで将来のマネージャーとしてスカウトされました。ちなみにニューオータニ本館には、世界的なフラワーアレンジャーであるケネス・ターナー氏(英)がデザインしたローズガーデンがあります。この時のプライベートガーデンは、今ではそのローズガーデンの横に日本料理のハーブ園、イタリアンのハーブ園として残っています。
編集部
こっそり作ったハーブ園が今ではホテルのサービスの1つとして残っているのですね。
大瀬
仕事に対する思いとして、どんな職に就いても必ず自分の足跡を残したいと考えています。この時のハーブもその1つです。またトゥールダルジャンではレストラン内にチャペルも作りましたが、それは当時の定番だった教会で式を挙げて宴会場で披露宴というホテルウェディングのスタイルを変えて、レストランウェディングを定着させたいと考えたのがきっかけです。
編集部
それまで存在しなかったものを形にして、更に自分が去った後もそれが誰かの手で続けられていくというのは、理想ではありますが容易いことではないですね。
大瀬
難しいことですが、それこそが仕事の醍醐味です。当時の上司が何でもやらせてくれるスタンスだったので他にも色々なことを試すことができました。バレンタインで作ったボンボンショコラはシャンパングラスにチョコレートを入れてグラスごと販売したり、(日本では)水を購入するという発想がなかった当時、エヴィアンやラムローサ等8種類のミネラルウォーターを取り寄せて販売したり、他にも水同様人間にとって塩も重要という発想から、フランスのゲランド、イタリアのモティア等複数の塩を料理に合わせて提供しました。今日はこの肉のためにこれだけの種類の塩を用意しましたという提案です。水もシャンパンクーラーに入れて提供する等、当時の日本では見られない方法。それでも見せ方によって商品の価値は変わります。お客様もここに来れば何か新しいことを知ることができるというコミュニケーションを求めてリピートします。付加価値によって値段は関係ないということを実感しました。
編集部
単に奇をてらったわけでなく、お客様に喜んでいただきたいという原理があるからこそ評価され根付いたサービスなのですね。
大瀬
そういった動機がアイディアにつながっているとは思います。そして様々な取り組みにより大きな経験を得られました。その中で次は福岡に2年間転勤しました。レストラン部門、バー部門、宴会部門と幅広く管轄するという立場で、時には国賓の接遇にも携わる経験ができました。レストランでは、当時福岡出身の松嶋啓介氏が25歳にしてフランスニースにお店を出した事から、凱旋フェアーができないかと社内で話が出てマーケティングが動き、現場の仕切りを任されました。パンフレット制作、集客、マニュアル、オペレーションといった一連の流れをチームで作り上げたのですが、フェアー開始の1週間前に、フランスミシュランガイドの発行があり松嶋シェフが28歳でミシュラン1ツ星を獲得したというニュースが入ってきました。そこから一気に予約が加速し全て満席となりました。またフランスにいる外国人最年少でミュシュラン獲得ということでも大きな話題になりました。このイベントがきっかけで松嶋氏が東京で店舗を構えたKEISUKE MATSUSHIMA TOKYOに誘われることになりました。
松嶋シェフにヘッドハンティングされた大瀬氏が選んだ道は・・・第2回(8月2週リリース予定)に続く

レストランマナーの基本~プロトコール~

プロトコールとは

ホテル・レストランサービスのスペシャリストである大瀬さんにレストランマナーについてうかがいました。接待でご利用されることの多いビジネスパーソンの皆様必見です。
大瀬
レストランでのマナー、食事をする時の行動は、全てプロトコールと呼ばれる原則から成り立っています。プロトコールを日本語で説明すると国際儀礼、つまり(異なる国同士が)守るべき共通のルールということなのですが、その根幹にはプロトコール五原則※というものがあります。
※プロトコール五原則・・・1.異文化の尊重、2.序列に配慮、3.右上位、4.相互主義、5.レディファースト
ビジネスの場ではゲストとホストがいます。テーブルの位置に関係することですが、これについてはプロトコール五原則の中の「右上位」という考えが影響してきます。つまり右側にゲストが座ります。例えばアメリカの大統領が日本に来て、日本の総理大臣がおもてなしする時もこの原則です。大統領が右側に座る。後ろに掲げる国旗(星条旗と日の丸)の位置も同じ原則で掲げられます。 また椅子に座る時、下座にあたる左側から腰掛けるのが正しいルールです。昔の貴族は左の腰にサーベルを添えていました。右から腰掛けると必ず引っかかるので左から入る。その習慣が元になっているとも言われています。またテーブルには一人の枠が決まっていてその幅は70cm。その両サイドに20cmの隙間があります。この空間にセットと椅子が配置されています。例えばエリザベス女王が部屋に入ってくると全員立ち上がります。その後一斉に座る時にこの幅と位置を決めておかないと雑然としてしまう。チェアサービス1つ1つにプロトコールに基づいた考えが反映されています。

銀座ウイスキーを語る

THE GINZA SELECTの注目アイテムである銀座ウイスキーについてお話をうかがいました。今後多くの方にこのウイスキーを知っていただくために、そして長く愛されるアイテムにするために、私達がユーザーの皆様に伝えるべきことは何かを、お聞きしました。一流のホテルやレストランで提供されている「ワンランク上の飲み方」、是非お試しください。

美味しいかそうでないかの問題で重要なのが、より美味しく作れるかどうかということです。例えばハイボールでウイスキーを飲む時、グラスに氷を無造作に入れて、ウイスキーを入れて、ソーダ水を入れて飲む。よく見る光景だと思いますが、一流のバーテンダーが作る際は、グラスに氷を入れてグラスだけ冷やす。それから余計な水分を切ってからウイスキーを注ぐ。そのままウイスキーを冷やすとグラスの中の温度が一定になる。そうすることでタンニンが治まってくる。そこに氷に当てないようにソーダ水を入れる。すると混ぜる必要がなくなります。2者を比べた時、前者は香がぐっと強くなっているのでごくごく飲めるタイプではないですが、後者は温度が締まって香もそれほど強くはないがごくごく飲めます。

日本のウイスキーは非常に人気が高く、CITY CLUB OF TOKYOでも稀少ブランドが入荷されればすぐに皆様キープされます。ただどのブランドも有名になる前のスタートラインは同じ。お話ししたような飲み方の提案や関連業界の方々から説得力あるご意見・コメントをいただいて発信する等、地道なPR活動が不可欠です。

Vol.2へ続く